misacco diary

干物。

歌を贈る

中学時代。

2年くらい住んでて、顔も見たこともない、道路をはさんだ向かいの住人。

こちらも一軒家、あちらも一軒家。

2階のわたしの部屋のちょうど真向かいの部屋が、あちらの家族の息子の部屋だった。

 

わたしより少し年上な気がする男の子。

窓をあけてるとよく聞こえた。歌声が。

カラオケの練習なのか、流行りの曲を色々、よく歌ってた。

その声で想像をふくらまし、見たこともない男の子に少し恋をした。

現実とは違う、夢の世界というか。歌声からかっこいい男の子を想像して。

 

たまにわたしも窓をあけて歌ってみたりした。

わざと。

向かいの部屋に聞こえるように。恋の歌とか。

可愛い女の子を想像してもらえるように、上手に歌うように努力した。

 

歌声のやり取りだった。

昔の人が御簾越しに、和歌をやり取りする感じに似ていたかも、と今では思う。

結局2年ほどでわたしは他のところへ引っ越してしまい、会うことはなかったけど、なんだかとてもワクワクした、秘密の思い出。